【ネタバレ注意】「LA LA LAND」感想文

※この文章は映画「LA LA LAND」の感想文です。ストーリーの核心部分のネタバレを含みますので、まだ鑑賞されていない方はご注意お願いします。というか本当にネタバレ無しで、まっさらな状態で観てほしい。ほんとうに素晴らしかったから。

 

 

 

 

 

この映画は、人生を精一杯生きようとする全ての人々へのエールだと感じました。

 

作中、「扉を開ける」シーンが何度もあるのだけど、これは主人公2人の転機や選択を表すモチーフなんだと思う。2人が出会うジャズバーの扉、キースのバンドが待つスタジオの扉、初めて喧嘩した夜のセブの部屋の扉、最後のオーディションが待つ面接室の扉、印象的なシーンや転機となるシーンの前に必ずと言って良いほど、2人は扉の前に立つ。未来へ向かうこと、進路を選び取る意思を扉を開けるという能動的な行為に象徴させることで、この映画のメッセージが強い力を帯びる気がする。

 

彼女達は何度も扉をノックし、たたき、開いてその先の世界へ飛び込んで行く。例えその度にやり切れない思い、魂を切り裂かれる様な痛みを味わったとしても、彼女達は次の扉をたたく事をやめられない。もしかしたらもう駄目かもしれない、自分には才能が足りないのかも知れない、運だって味方してくれないのかも知れない…そんなふうに何度も挫折を味わいくじけそうになっても、それでも立ち上がり前を向く姿は、ただそれだけで美しい。僕もそんな風に生きたいと、そう率直に思わせてくれるのは、やっぱり映画の…歌と音楽、役者の演技、映像美、脚本…そういった全てのものの力だ。

 

これはそんな風に苦悩しながら夢を追いかけ、かなえた人々の話です。そして夢をかなえた所で、何もかもをつかみ取れる訳じゃない事も、この映画は語っている。

 

クライマックスは色んな捉え方があるけれど、あの煌びやかな空想シーンが切なく、魅入られるように綺麗なのは、2人が自分の歩んできた道に後悔していないからこそだと思う。何か一つ手応えをつかもうとすれば、その他のものを諦めなければいけない。2人は最初からその事を知っていた。だから最後に2人はうなずき合い、微笑みさえも交わす。そして歩んできた道への誇りと、あり得たかも知れない過去と未来への憧れ、そういうものを2人は音楽と眼差しだけで共有し合うことができた。ただそれだけの事でも、ほとんど奇跡だと僕は思う。悲しいどころか、あんな失恋があったら最高じゃないかとさえ。

 

「LA LA LAND」、それは生きるエネルギーと、最高の失恋を描いた映画だ。